脇役から主役へステイゴールド
ステイゴールドがデビューした頃には、
既にフジキセキ,ジェニュイン,タヤスツヨシ,ダンスパートナー,イシノサンデー,ダンスインザダークなどのサンデーサイレンス産駒がG1を勝ち、
サッカーボーイの全妹を母に持つステイゴールドも、デビュー前から大きな期待がかけられていました。
しかし、デビュー戦を3着で終えた後の折り返しの新馬戦で最下位と惨敗。この頃はソエを気にしていたようです。
復帰後のダート戦では、砂をかぶるのを嫌がって、何と最終コーナーで逸走。競走中止の憂き目に遭いました。
サンデーサイレンス特有の気性の激しさが悪い方向に出てしまったのでしょうか。
芝に戻ってから徐々に調子を取り戻し、僚馬ブレーブテンダーのNHKマイルCに併せて帯同した東京の未勝利戦でようやく初勝利を挙げました。
続く500万条件のすいれん賞で2連勝となり、一戦おいて900万条件の阿寒湖特別で3勝目を挙げました。
しかし、この時点で「主な勝ち鞍:阿寒湖特別」という状況が2年8ヶ月も続くことになるとは……。
春のクラシックには間に合わなかったステイゴールドですが、京都新聞杯4着を経て、最後の三冠レース菊花賞へ。
しかし、この時点ではまだ力不足だったのか、見せ場なく8着に敗れました。
その後、4勝目を目指してゴールデンホイップT,万葉S,松籟S,ダイヤモンドSに出走しましたが、4連続2着。
ただ、ダイヤモンドSは重賞レースなので、2着でも賞金加算。
G1出走のためには貴重な賞金加算でしたが、勝ち味を忘れたままオープン入りしてしまったという見方もできるかもしれません。
日経賞4着を経て、天皇賞(春)へ。2度目のG1挑戦です。
前半の1マイルが1分43秒5という超スローペースの中、7番手で折り合いを付けたステイゴールドは、最後の3ハロンで34.3秒の末脚を使いました。
早めに抜け出したメジロブライトを捕らえ切れず、2着に敗れましたが、一流馬の仲間入りを果たした瞬間でした。
目黒記念3着を挟んで出走した宝塚記念では、金鯱賞を大差勝ちして本格化した同期のサイレンススズカが圧倒的1番人気。
ステイゴールドは2着に敗れたとは言え、3/4馬身差まで詰め寄ったのは大健闘と言えるでしょう。
そのサイレンススズカが残念ながら予後不良となってしまった天皇賞(秋)で、ステイゴールドはまたしても2着。
最後の直線で蛯名騎手が追えないほど内ラチに刺さってしまい、G1制覇の大チャンスを逃してしまいました。
個人的には、このレースが国内G1で最も惜しかったように思います。
G1・3連続2着の珍事に、「ステイシルバー」なんて揶揄する声も……。
ジャパンC10着,有馬記念3着の後、4勝目と重賞初制覇を目指して、なりふり構わず出走したステイゴールドでしたが、日経賞,金鯱賞,鳴尾記念,宝塚記念と3着。
「今度はブロンズコレクターか?」と言われながら出走した天皇賞(秋)で、久しぶりの2着。
スペシャルウィークとの組み合わせで馬連万馬券という不思議なレースでした。
2000年になっても出走し続けたステイゴールド。この馬は現役時代に冬休みを取ったことがありません。
AJCC2着,京都記念3着,日経賞2着と勝ちきれないレースが続きました。
特に、京都記念で負けたテイエムオペラオーとの相性が悪く、対戦成績は12戦12敗。一度も勝てなかったんです。
そんなテイエムオペラオーが2000年の古馬中・長距離G1を総ナメしてしまったので、逆にステイゴールドにはチャンスがなくなってしまったのです。
天皇賞(春)4着の後、池江泰郎調教師はある決断をしました。主戦騎手の交代です。
熊沢騎手の騎乗技術がうんぬんという問題よりも、この悪い流れを断ち切りたいという思いの方が強かったのでしょう。
武豊騎手に乗り替わった目黒記念で、待望の重賞制覇を成し遂げました。阿寒湖特別以来、2年8ヶ月ぶりの4勝目です。
この時は、雨天にもかかわらず、G1並みの歓声が上がったそうで、G1・2〜3着を繰り返していたステイゴールドに、いつの間にか応援するファンが増えていたのでしょう。
感動的なシーンでした。
この年のステイゴールドは、重賞制覇で力尽きてしまったのか、宝塚記念以降は目立った成績を挙げることなく2000年を終えました。
しかし、7歳になった2001年。日経新春杯で2つ目のG2をゲットし、今年は何かやってくれるのでは?と期待を抱かせてくれるスタートを切りました。
ここで、池江調教師は2つ目の決断。ステイゴールドをドバイへ連れて行ったんです。相手は前年の世界チャンピオンホース、ファンタスティックライト。
国内ではハナ差,クビ差で惜敗することが多かったステイゴールドが、何と世界チャンピオンをハナ差で退けてしまったんです。
これは、サンデーサイレンス産駒初の海外重賞制覇で、世界中をアッと驚かせました。
ただ、非常に残念だったのが、当時のシーマクラシックが「G2」だったこと。G1に昇格したのが翌年の2002年というのは何という皮肉なのでしょう。
国内に戻り、秋の京都大賞典では初めてテイエムオペラオーに先着したものの、進路を妨害されたナリタトップロードが落馬。
ステイゴールドには失格の裁定が下されてしまいました。
テイエムオペラオーがいる国内ではどうも上手くいかないステイゴールド。池江調教師は最後のチャンスを香港に賭けました。
ターゲットは2000年からG1に昇格している香港ヴァーズ。アウェーの地ですが、ここには天敵テイエムオペラオーがいません。
レースは前半6ハロンが76秒4という超スローペース。早めに抜け出したエクラーが最後の直線で8馬身ほどの差を付け、セーフティーリードに見えました。
しかし、ステイゴールドが残り150mで手前を替えると、もの凄い脚でエクラーを猛追。頭差交わしたところがゴールでした。
50戦目にして念願のG1制覇。しかも内国産馬初の快挙。日本の競馬界全体が感動に包まれた瞬間でした。
種牡馬になったステイゴールドは、ドリームジャーニー,ナカヤマフェスタという2頭のグランプリホースを輩出しました。
そのナカヤマフェスタは2010年の凱旋門賞で惜しくも2着。父譲りの小柄なステイゴールド産駒は、海外に適しているのかもしれませんね。
今後も、産駒の益々の活躍を期待したいところです。
ステイゴールド全成績
1996/12/ 1 3歳新馬 阪神芝2000m 14頭立て 3着 2.05.3 ペリエ54
1996/12/21 3歳新馬 阪神芝2000m 16頭立て16着 2.11.8 ペリエ54
1997/ 2/15 3歳未勝利 京都ダ1800m 12頭立て中止 -.--.- 熊沢55
1997/ 3/22 3歳未勝利 阪神芝2000m 13頭立て 2着 2.06.9 熊沢55
1997/ 4/19 3歳未勝利 京都芝2400m 18頭立て 2着 2.27.4 熊沢55
1997/ 5/11 3歳未勝利 東京芝2400m 18頭立て 1着 2.28.4 熊沢55
1997/ 6/ 7 すいれん賞(500) 中京芝2500m 10頭立て 1着 2.37.4 熊沢55
1997/ 6/29 やまゆりS(900) 阪神芝2000m 13頭立て 4着 2.03.7 熊沢54
1997/ 9/ 6 阿寒湖特別(900) 札幌芝2000m 14頭立て 1着 2.02.5 熊沢55
1997/10/12 京都新聞杯(G2) 京都芝2200m 12頭立て 4着 2.13.5 熊沢57
1997/11/ 2 菊花賞(G1) 京都芝3000m 18頭立て 8着 3.08.2 熊沢57
1997/11/30 ゴールデンホイップT(1600)阪神芝2000m 13頭立て 2着 2.01.4 武豊56
1998/ 1/17 万葉S(OP) 京都芝3000m 14頭立て 2着 3.06.3 熊沢54
1998/ 2/ 8 松籟S(1600) 京都芝2400m 16頭立て 2着 2.28.0 熊沢56
1998/ 2/21 ダイヤモンドS(G3) 東京芝3200m 16頭立て 2着 3.17.8 熊沢54
1998/ 3/29 日経賞(G2) 中山芝2500m 12頭立て 4着 2.34.9 熊沢56
1998/ 5/ 3 天皇賞・春(G1) 京都芝3200m 14頭立て 2着 3.23.9 熊沢58
1998/ 6/13 目黒記念(G2) 東京芝2500m 13頭立て 3着 2.35.5 熊沢57
1998/ 7/12 宝塚記念(G1) 阪神芝2200m 13頭立て 2着 2.12.0 熊沢58
1998/10/11 京都大賞典(G2) 京都芝2400m 7頭立て 4着 2.26.2 熊沢57
1998/11/ 1 天皇賞・秋(G1) 東京芝2000m 12頭立て 2着 1.59.5 蛯名58
1998/11/29 ジャパンC(G1) 東京芝2400m 15頭立て10着 2.27.3 熊沢57
1998/12/27 有馬記念(G1) 中山芝2500m 16頭立て 3着 2.32.6 熊沢57
1999/ 2/14 京都記念(G2) 京都芝2200m 10頭立て 7着 2.16.1 熊沢58
1999/ 3/28 日経賞(G2) 中山芝2500m 13頭立て 3着 2.36.3 熊沢57
1999/ 5/ 2 天皇賞・春(G1) 京都芝3200m 12頭立て 5着 3.16.2 熊沢58
1999/ 5/29 金鯱賞(G2) 中京芝2000m 15頭立て 3着 1.59.9 熊沢57
1999/ 6/20 鳴尾記念(G2) 阪神芝2000m 10頭立て 3着 2.02.6 熊沢57
1999/ 7/11 宝塚記念(G1) 阪神芝2200m 12頭立て 3着 2.13.7 熊沢58
1999/10/10 京都大賞典(G2) 京都芝2400m 10頭立て 6着 2.25.0 熊沢57
1999/10/31 天皇賞・秋(G1) 東京芝2000m 17頭立て 2着 1.58.1 熊沢58
1999/11/28 ジャパンC(G1) 東京芝2400m 14頭立て 6着 2.26.6 熊沢57
1999/12/26 有馬記念(G1) 中山芝2500m 14頭立て10着 2.38.2 熊沢56
2000/ 1/23 AJCC(G2) 中山芝2200m 14頭立て 2着 2.13.8 熊沢58
2000/ 2/20 京都記念(G2) 京都芝2200m 11頭立て 3着 2.14.0 熊沢58
2000/ 3/26 日経賞(G2) 中山芝2500m 10頭立て 2着 2.35.6 熊沢57
2000/ 4/30 天皇賞・春(G1) 京都芝3200m 12頭立て 4着 3.18.3 熊沢58
2000/ 5/20 目黒記念(G2) 東京芝2500m 15頭立て 1着 2.33.2 武豊58
2000/ 6/25 宝塚記念(G1) 阪神芝2200m 11頭立て 4着 2.14.1 安藤勝58
2000/ 9/24 オールカマー(G2) 中山芝2200m 9頭立て 5着 2.17.0 後藤58
2000/10/29 天皇賞・秋(G1) 東京芝2000m 16頭立て 7着 2.00.8 武豊58
2000/11/26 ジャパンC(G1) 東京芝2400m 16頭立て 8着 2.26.6 後藤57
2000/12/24 有馬記念(G1) 中山芝2500m 16頭立て 7着 2.34.8 後藤56
2001/ 1/14 日経新春杯(G2) 京都芝2400m 11頭立て 1着 2.25.8 藤田58.5
2001/ 3/24 ドバイシーマC(G2) ナド芝2400m 16頭立て 1着 2.28.2 武豊56
2001/ 6/24 宝塚記念(G1) 阪神芝2200m 12頭立て 4着 2.12.1 後藤58
2001/10/ 7 京都大賞典(G2) 京都芝2400m 7頭立て失格 2.24.9 後藤58 (1位入線)
2001/10/28 天皇賞・秋(G1) 東京芝2000m 13頭立て 7着 2.00.8 武豊58
2001/11/25 ジャパンC(G1) 東京芝2400m 15頭立て 4着 2.26.6 武豊57
2001/12/16 香港ヴァーズ(G1) シャ芝2400m 14頭立て 1着 2.27.8 武豊57.1