コラム −HTML5と動画コーデック−

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こらむ   HTML5と動画コーデック
 Internet ExplorerやFirefox,Google Chrome,Opera,Safariなどのブラウザで閲覧できるホームページは「HTML」という文法で書かれています。 ブラウザの右クリックで「ソースの表示」を選択すると、HTMLを見ることができます。 これをブラウザが読み込んで視覚的に表現し直しているわけですが、下の画像を見ていただくとブラウザによって若干見え方が違うことがわかります。 と言っても、IE以外は気付かないほどの違いですが……。(画像はクリックすると大きくなります。)
Internet Explorer 8 Firefox 4 Google Chrome 10 Opera 11 Safari 5
 現在、HTMLのバージョンは『4』が多く用いられていますが、上の画像を表示するためには、
<img src="ie.jpg" width="240" height="240">
のように記述しています。これはJPEGでも、GIFでも、PNGでも同じです。しかし、HTML4には動画を表示するためのタグがありません。 Web上で動画を再生する際には、通常FLASHムービーが使用されます。例えば、YouTubeの動画を埋め込むための記述は、こんな感じです。
<object width="425" height="344">
 <param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/x5VmqDZfqBU"></param>
 <embed src="http://www.youtube.com/v/x5VmqDZfqBU"
 type="application/x-shockwave-flash" width="425" height="344"></embed>
</object>
 画像の<img>タグと比べると複雑ですね。それに、FLASHムービーを使うためには、Adobe(旧Macromedia)のライセンスが必要になります。 ほとんどのブラウザが無償で提供され、一部はオープンソースにまでなっているのに、動画の部分だけライセンスが必要となると、割が合わないわけです。 iPhoneやiPadがFLASHムービーをサポートしなかったため、SafariではYouTubeなどの動画が見られなくなってしまったことでご存じの方が多いと思います (iOS専用のアプリでYouTubeを視聴することは可能)。
 そこで、新しいHTMLのバージョン『5』の登場です。 HTML5では、スタイルシート(css)で表現できる<big>,<center>,<font>,<strike>,<tt>,<u>タグの他、フレームそのものが廃止された一方、 動画や音声が<video>,<audio>タグで出力できるようになりました。例えば、動画であれば
<video src="theora.ogv" width="640" height="360"></video>
だけで良いんです! ただ、動画の場合は拡張子が同じでも、内部コーディックが違うために再生できないということがよくあります。 それでは、ブラウザで再生できる動画形式は何でしょうか。実は、真っ二つに分かれているんです。
Codec Internet Explorer 8 Firefox 4 Google Chrome 10 Opera 11 Safari 5
MPEG4(H.264/AAC) ×(9以降:○?) × ×
OGG(Theora/Vorbis) × ×
 FLASHが再生できないSafariのためにMPEG4(H.264/AAC)形式の動画を置くと、今度はFirefoxやOperaで見られなくなってしまいます。 H.264は多数の特許を利用した技術だそうで、ライセンス料が発生するためにFirefoxやOperaでは未対応となっています。 一方のOGG(Theora/Vorbis)形式はオープンソース,パテントフリーですが、普及自体が進んでいません。 現在、MPEG4やOGGに代わる規格として、GoogleがWebM(VP8/Vorbis)形式を開発しているそうですが、他の特許に抵触しているという噂もあり、こちらも前途多難です。 当面の対策として、以下のように<source>タグを使えば、再生可能な動画のみを表示することができますが、複数の動画形式を用意しなければいけないというのは、本当に面倒臭いですね……。
<video>
 <source src="theora.ogv" type="video/ogg">
 <source src="h264.mp4" type="video/mp4">
 <source src="vb8.webm" type="video/webm">
 <p>動画を再生するには、videoタグをサポートしたブラウザが必要です。</p>
</video>
 以下にMPEG4,OGG形式の動画を置いてみましたので、ご興味がある方は動作確認してみて下さい。 なお、動画をアップロードされる方への注意事項として、「WebサーバによってはOGG形式の拡張子が関連づけされておらず、再生できないサーバもある」ということが挙げられます。 .htaccessを置くことによって再生できるようになるみたいですが、tok2では.htaccessが無効になってしまい、再生できませんでした。 また、Geocitiesはそもそも動画ファイル自体が置けませんでした(容量制限?)。

MPEG4(H.264/AAC)形式

OGG(Theora/Vorbis)形式

 HTML5で<video>タグができても、規格・形式が複雑なままの動画業界。『VHS vs ベータ』の時代からちっとも変わっていないと思うのは私だけでしょうか。 2011年3月現在では、Google ChromeだけがMPEG4,OGG,WebM形式の全てに対応し、サーバで関連づけされていなくても再生できるようです。 ChromeとAndroidで攻勢をかけるGoogle。さらにOSがリリースされれば、一人勝ちの時代がやって来るのでしょうか。 下記の本を読むと、そんな気がしてしまいます。
辻野 晃一郎 著「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」(新潮社)