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こらむ   日本語の乱れ
 最近、「日本語の乱れ」に関する話題をよく耳にします。「ら抜き言葉」から始まり、 「若者言葉」、「ギャル語」、「バイト敬語」など、”創られた日本語”が数多く存在しているのが実態です。
 しかし、共通語だけが正しい日本語であるか、と言われればそうではなく、全国各地には「方言」があり、 かつては「文語」と「口語」の使い分けがなされていました。もし、日本語を変えてはいけないということになれば、 「源氏物語」や「枕草子」の時代の日本語が正しいということになってしまいます。その枕草子の中でも
 「なに事を言ひても、『そのことさせんとす』『いはんとす』『なにせんとす』といふ『と』文字を失ひて、 ただ『いはむずる』『里へいでんずる』など言へば、やがていとわろし。」
と、当時の若者の言葉の乱れを嘆く場面がありますが、言葉というものは時代とともに変化するものだと理解するのが正しいと思われます。 ただ、いくら変化するとは言え、人を不快にするような言葉はよろしくないわけでして、 異なる地域、世代、性別間でも良好なコミュニケーションを構築することが必要であると考えます。
 そこで、文部科学省「国語審議会」で話題になっているいくつかの事例を紹介していきましょう。
 まずは、「ら抜き言葉」。「見る」のような上一段活用動詞、「食べる」のような下一段活用動詞、「来る」のようなカ行変格動詞は、 それぞれ以下のように活用します。
  • 見る :みない (みられる)  みて  みる  みるとき  みれば  みろ
  •  
  • 食べる:たべない(たべられる) たべて たべる たべるとき たべれば たべろ
  •  
  • 来る :こない (こられる)  きて  くる  くるとき  くれば  こい
「可能」を表す場合は、「未然形+られる」というのが本来のルールですが、これを「みれる」、「たべれる」、「これる」というのが「ら抜き言葉」です。 一時期、この「ら抜き言葉」が言葉の乱れの代表みたいな感じで取り上げられたことがありますが、 最近では、「れる、られる」の表現は「受身」や「尊敬」を表す場合にも用いられ、 これらと区別するために、可能を表す「ら抜き言葉」が用いられるようになったという解釈もされるようになってきました。 ちなみに、大手コンビニエンスストアーのCM
 「食べれる、しゃべれる」
は、「ら抜き言葉」の多用です。また、日本語入力ソフト「ATOK」で「ら抜き言葉」を入力すると、ご丁寧に≪ら抜き言葉≫と表示されます。
 さて、次は敬語に関するもの。これは、国語審議会で多く取り上げられています。まずは、「二重敬語」。 これは、元々尊敬語になっているにもかかわらず、「れる・られる」の尊敬助動詞を入れてしまう例です。
 ×先生が来るようにとおっしゃられました。
また、謙譲語+「れる・られる」のパターンは、文法的に誤りです。
 ×先生が来るようにと申されました。
ただ、二重敬語については、戦前まではとくに問題はないとされていたようですが、 戦後になって平等社会ではふさわしくないのではないかということで、使わないのが望ましいことになったようです。
 「〜させていただく」の濫用や 「〜していただく・お〜いただく」の誤用も目に付きます。
 ×閉会させていただきます。
 ×お読みいただいてからお使いください。
をそれぞれ常体に戻すと「閉会してもらう。」「読んでもらってから使いなさい。」となってしまい、 誰かにやってもらうわけではないのにこの表現は正しくありません。
 なお、従来敬語は「尊敬語(いらっしゃる)」「謙譲語(伺う)」「丁寧語(行きます)」の3種類でしたが、 最近では「丁重語(参ります)」「美化語(お店)」を含めた5種類で分類されることが多いようです。
 敬語と言えば、アルバイトのマニュアルの中に誤用が多く含まれています。いわゆる「バイト敬語」ですが、下記のものが「バイト敬語」にあたります。
 ×お席のほうにご案内します。(○お席にご案内します。)
 ×メニューになります。   (○メニューでございます。)
 ×500円からお預かりします。 (○500円をお預かりします。)
 特に「ほう」というのはアルバイト以外の場面でもよく耳にします。 「ほう」は元々方向を指す場合や、2つのものを比較して一方を指す場合に用いられますが、 上記の例では特に方向を指しているわけでも比較をしているわけでもありませんので、「ほう」をつける必要はありません。 これが気になりだすと、かなりの人が「ほう」を多用していることに気づかされます。
 ただ、客側も安心してはいけません。よくお寿司屋さんなどで「おあいそ。」と言っている人がいますが、これも誤りです。 元々、「お勘定!」とお店の方が言ってしまうと、「早く出て行け!」という感じに聞こえてしまうために「お愛想」という隠語を当てたものであり、 これをお客の側が使うのはおかしいわけです。「お勘定をお願いします。」でいいのではないでしょうか。
 ついでに、誤った用法をいくつか紹介します。
 ×愛想を振りまく。  (○愛嬌を振りまく。)
 ×怒り心頭に達する。 (○怒り心頭に発する。)
 ×噂をすれば影が立つ。(○噂をすれば影が差す。)
 ×押しも押されぬ。  (○押しも押されもしない。)
 ×風の噂。      (○風の便り。)
 ×視野に入れる。   (○視野に入る・視界に入れる。)
 ×精も根も疲れ果てる。(○精も根も尽きる。)
 ×的を得る。     (○的を射る・当を得る。)
 ×汚名挽回      (汚名返上または名誉挽回)
 ×著作権違反     (著作権法違反または著作権侵害)
 ×生き様       (死に様はあるが、生き様はない。)
 さて、次に国語審議会で問題となるのは、「外来語・外国語の多用」です。 安部総理大臣や石原東京都知事が特に多用する傾向がありますね。国語審議会では外来語を以下の3つに分類しています。
 a. それまで日本になかった事物や新概念を表す
   例:ラジオ,キムチ,アンコール
 b. 専門用語として取り入れる
   例:オゾン,インフレーション
 c. その語に伴うイメージを活用する
   例:キャリアウーマン(「職業婦人」を言い換えて新しいイメージを出している)
 この中で、a,bについてはないと困るものもありますが、cについてはどうでしょうか。 cの用法は、新しいイメージを出すのには適していますが、従来の意味が曖昧になるといった欠点を持っています。例えば、
 「このシステムエンジニアリングは、イノベーションのポテンシャルを持っている。」
と言われても、何のことやらわかりません。
 国語審議会では、外来語について、以下のように提言しています。
 1) 広く一般的に使われ,国民の間に定着しているとみなせる語
   →そのまま使用する
    例:ストレス
      スポーツ
      ボランティア
      リサイクル
      PTA

 2) 一般への定着が十分でなく,日本語に言い換えた方が分かりやすくなる語
   →言い換える
    例:アカウンタビリティー→説明責任
      イノベーション→革新
      インセンティブ→誘因,刺激,報奨金
      スキーム→計画,図式
      プレゼンス→存在,出席
      ポテンシャル→潜在的な力     など

 3) 一般への定着が十分でなく,分かりやすい言い換え語がない語
   →必要に応じて,注釈を付すなど,分かりやすくなるよう工夫する
    例:アイデンティティー
      アプリケーション
      デリバティブ
      ノーマライゼーション
      ハードウェア
      バリアフリー

 ※1)〜3)に属する語のうち,ローマ字の頭文字を使った略語については、少なくとも
  初めて出現する時には,日本語訳(必要に応じて注釈や省略しない形)を付す
    例:ASEAN(東南アジア諸国連合)
      GDP(国内総生産)
      NPO(民間非営利組織)
      PL法(製造物責任法)
      WTO(世界貿易機関)
 また、外来語と思われるものの中には、「和製英語」も多いので、特に外国人の方と会話する時には注意が必要です。
  • オーダーメイド    (custom-made, tailor made, made to order)
  • オートバイ      (motorcycle, motorbike)
  • ガードマン      (watchman, security guard)
  • ガソリンスタンド   (英 petrol station 米 gas station)
  • キャッチボール    (play catch)
  • コインランドリー   (launderette, laundromat)
  • コンセント      (差込口:(electrical) outlet, socket,電源コードの先:plug)
  • サインペン      (marker)
  • サンドバッグ     (punching bag)
  • ジェットコースター  (roller coaster)
  • シルバーシート    (priority seats)
  • ダンプカー      (英 dumper 米 dump truck)
  • デッドボール     (hit by pitch) 
  • チアガール      (cheerleader)
  • デコレーションケーキ (fancy cake)
  • テレビゲーム     (video game)
  • ドライブイン     (rest area)
  • ナイター       (night game)
  • ナンバープレート   (license plate)
  • バージョンアップ   (upgrade, update)
  • バックミラー     (rear-view mirror)
  • ブックカバー     (dust jacket)
  • プッシュホン     (touch-tone phone)
  • フライドポテト    (英 chips 米 french fries)
  • フロントガラス    (英 windscreen; 米 windshield)
  • ペーパーカンパニー  (shell company)
  • ペーパーテスト    (written examination(test))
  • ペーパードライバー  (≒sunday driver)
  • ベビーカー      (baby carriage, stroller) ※"baby car"は小型自動車
  • マイカー       (Preivate car)
  • マイナスイオン    (anion,negative ion)
  • マイブーム      (personal taste)
  • モーニングコール   (wake-up call)
  • モーニングサービス  (breakfast special)
  • リサイクルショップ  (second-hand shop)
  • ロスタイム      (additional time)
 また、最近気になるのが、外国語の略語です。どうも4文字に省略すると呼びやすくなるようです。 この中には、昔から使われているものから、最近造られたものまであります。
     
  • アングラ (underground)
  • インフラ (infrastructure)
  • インフレ (inflation)
  • エアコン (air conditioner)
  • エアロビ (aerobics)
  • コンビニ (convenience store)
  • スタメン (starting member, starter, newbie)
  • ゼネコン (general contractor)
  • デジカメ (digital camera)
  • パソコン (personal computer, PC)
  • ハンカチ (handkerchief)
  • マスコミ (mass communicationは誤用、正しくはmass media)
  • ラジコン (radio controlled)
  • リモコン (remote controller)
 ただ、最近の「若者言葉」「ギャル語」では、日本語や商品名についても省略してしまう傾向があり、 このあたりまで来ると、さすがに「言葉の乱れ」でしょうか……。
  • あけおめ (明けましておめでとう(ございます)。)
  • おっはー (おはよう。)
  • おっつー (お疲れ(さま)。)
  • ことよろ (今年もよろしくお願いします。)
  • メリクリ (メリークリスマス。)
  • セッター (セブンスター)
  • マイセン (マイルドセブン)
  • マルメン (マールボロメンソール)
 その他、「若者言葉」には以下のようなものがあります。
  • 超,チョー
  • めっちゃ
  • キモい
  • ウザいうぜえ
  • ヤバいヤベえ
  • マジ
  • キュン死に
  • キモかわいい,ダサかっこいい,ブスかわいい
  • ちょいわるおやじ,ちょいモテオヤジ
 また、携帯電話などでは、「あいうえおつやゆよわ」の代わりに、促音や拗音を表す小文字「ぁぃぅぇぉぅゃゅょゎ」を使うことが流行っているそうです。
  • ぉはょぅ
  • ぉゃすみ
  • ぅれしぃ
 一時期、女子学生の間では「丸文字」が流行りましたが、デジタル時代の今では、その代わりに(?)この「小文字」が流行っているとのことです……。 そう言えば、日本語ではありませんが、文字を巧みに使った「顔文字」というのもありますね。\(^o^)/
 そろそろ疲れてきました(笑)。とにかく文語でも口語でも相手を不快にさせない日本語を使うことが重要だと思います。 相手の立場を考慮して言葉を遣うこと、特に文語の場合は、ゆっくり読み返しても不快にならないように注意して書くことが大切です。 こんなことを書いていて、この文章そのものが乱れていなければいいのですが……(汗)。

出典:Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/日本語の乱れ