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こらむ   WBC
 第1回WBCは日本の優勝で幕を閉じました。 WBCといってもWorld Boxing Council(世界ボクシング評議会)ではありません。 WBCフライ級,WBCバンタム級,WBCフェザー級,WBCライト級,WBCウェルター級,WBCミドル級,WBCヘビー級…… と、WBCはボクシングでよく耳にする言葉ですよね。 ちなみに、ボクシングはWBA(World Boxing Association;世界ボクシング協会)やIBF(International Boxing Federation;国際ボクシング連盟)、 WBO(World Boxing Organization;世界ボクシング機構)と4つも団体があって、かなりややこしくなっています(爆)。
 さて、本題の野球のWBCに話を戻しましょう。こちらは、World Baseball Classicの略です。 なぜ「Classic」なのかはよくわかりませんが……。
 野球は、世界的にみるとマイナーなスポーツです。アメリカを中心に、中米や日本をはじめとした東アジアの国でしか普及していないことの他に、 ルールがかなり難しいことが挙げられると思います。日本では野球の文化が定着していますので、大多数の方はルールをよくご存じだと思いますが、 みなさんは例えばヨーロッパの方に野球というスポーツを簡単に説明することはできますか?
 ピッチャーがホームベースの横に立っているバッターにボールを投げ、バッターはバットでボールを打ち返す。 右45度に1塁ベース、ピッチャーの背後に2塁ベース、左45度に3塁ベースがあり、1塁−2塁−3塁−ホームは正方形。 バッターは1塁から3塁の間(90度)にボールを打ち返さないといけない。 ピッチャーはホームベースの幅およびバッターの方から膝の間にボールを投げなければならず、この範囲に入ればストライク、入らなければボール。 バッターは3ストライクまたは打った球が塁に到達するまでにバッター自身が到達しなければアウト。 また、地面に着く前に守備側の野手が球を獲ったらアウト。その場合、ランナーは次の塁に進むことはできないが、タッチアップは可。 ランナーは1塁,2塁,3塁の順に進塁し、ホームに到達すれば1点。ただし、塁上以外でボールをもつ野手にタッチされればアウト。 ピッチャーは4回ボールを投げるとバッターは1塁に進塁。次の塁にランナーがいる場合は、それぞれ進塁できる。 1塁から3塁の間で外側のフェンスを越えるとホームランでバッターが1周してホームに帰還できる。
 これだけ説明しても、まだ説明が足りませんし、これではどんなスポーツか、よくわかりません。 サッカーやバスケットボールであれば、とにかくゴールにボールが入れば、点が入るということだけ分かっていれば、十分楽しむことができます。
 こんなスポーツですから、2012年のロンドン五輪から、野球とソフトボールは五輪種目から外れることになりました。 日本人がクリケットを知らないのと同じように、イギリス人には野球は理解されないわけです。
 だから始まったのかどうかは分かりませんが、WBCが2006年より始まりました。主催はMLB(Major League Baseball)。 ん? MLB? そうです。主催はアメリカのプロ野球機構なんです。
 私は、以前からWorld Seriesという言葉に違和感を感じていました。 ご存じの通り、MLBのAmerican LeagueとNational Leagueのチャンピオンが戦うシリーズですが、これは正確に言うと「アメリカNo.1決定戦」です。 日本のNo.1決定戦は「日本シリーズ」と呼んでいます。だから、「American Championship Series」でないとおかしいのです。 野球の発祥の地は確かにアメリカですが、「World Series」は傲慢すぎる表現だと思っています。
 そういう意味では、WBCは真の意味で「World Series」かな、と思いますが、MLBが主催ということで、さまざまなところにおかしいところがありました。 まずは、試合の組み合わせ。今回、日本は韓国と3回も対戦しました。何故こんなことが起きたのでしょうか? 1次リーグはまあ良しとしましょう。地区別に対戦するということは、サッカーのワールドカップでも予選であることですから、 日本と韓国,台湾,中国と対戦することは、そんなに違和感を覚えません。ここで韓国と日本が1次リーグを通過しました。 次に2次リーグですが、日本と韓国が同じグループに入っています。ここが1つおかしい所です。 2次リーグは2グループしかないわけですから、1次リーグの同組が入っていてはおかしいわけです。 さらにおかしいのが準決勝の組み合わせ。日本はまた韓国と対戦しました。 同グループの1位と2位が戦ったわけです。普通のセンスでは、1位は別のグループの2位と対戦するわけですが、そうはなっていなかったのです。
 こんなおかしな組み合わせになっていた理由は簡単です。 アメリカが決勝まで確実に進むために、準決勝までは弱小チームとアジアのチームとだけ戦い、 キューバやドミニカ共和国といった強豪とは、決勝まで絶対に対戦しない組み合わせになっていたわけです。
 そんなアメリカが2次リーグ敗退となり、言葉は悪いですが「ざまぁみろ〜」といった感じがします。 これに気分を悪くして、次回以降のWGCはないかもしれませんが……。 逆に韓国は気の毒です。日本に2勝1敗でも準決勝敗退となってしまったわけですから。 個人的には、兵役免除を決めるのが早すぎたように思います。兵役免除を目指す闘志が+アルファの力を出していたようにも思いますので。
 もう1つおかしな点としては、アメリカ戦でMLBの審判が試合を裁いていたことです。 サッカーなどの場合、国際試合では対戦国と関係のない第3国から審判を選ぶのは当然の常識となっています。 今回は、日本戦やメキシコ戦でボブ・デービッドソンが「誤審」を犯しましたが、 これはアメリカの野球のレベルが低下していることを象徴する皮肉な出来事だったように思います。
 まあ、何はともあれ、日本や韓国では今回のWBCで国全体が盛り上がったので、大会自体に不備があったとしても、開催の意義はあったように思います。 国際野球連盟を設立し、中立な立場で企画・運営できれば、他のスポーツでは当たり前のように行われている「世界選手権」が、野球でも実現すると思いますので、 アメリカも今回の「敗戦」を真摯に受け止め、各国が知恵を出し合ってWBCをより良い大会にしてほしいと願っています。